【感想】クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime(国立国際美術館)の鑑賞レポート
大阪にある国立国際美術館にて、「クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime」展を鑑賞してきたので紹介します。
クリスチャン・ボルタンスキー氏のことは、瀬戸内国際芸術祭へ行ったときに知りました。豊島にある「心臓音のアーカイブ」があまりにも印象的だったのです。真っ暗闇の中、無数の心臓音が鳴り響くのを聞いて、生と死について考えを巡らせたことを覚えています。
今回の「クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime」展も、心臓音のアーカイブを彷彿とさせる内容です。会場は薄暗く、心臓音が響いていました。加えて、新聞紙から切り取られた人の写真や、お墓をモチーフにした作品などが展示されており、「死」について考えざるを得ませんでした。
ではもっと詳しく、「クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime」展についてお伝えしますね。
国立新美術館での鑑賞レポートもありますので、併せてチェックしていただけると嬉しいです。
鑑賞レポート「クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime」展(国立新美術館)
「クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime」展 概要
展示会紹介
クリスチャン・ボルタンスキー(1944年-)は、現代のフランスを代表するアーティストのひとりです。1960年代後半より短編フィルムを発表し始めたボルタンスキーは、1970年代に入り、写真を積極的に用いるようになりました。人が歩んできた歴史や文化人類学への関心を土台とし、写真やドキュメントとビスケット缶などの日用品を組み合わせることで、自己あるいは他者の記憶に関連する作品を多数制作し、注目を集めます。1980年代に入り、明かりを用いたインスタレーションを手掛けるようになったボルタンスキーは、子どもの肖像写真と電球を祭壇のように組み合わせて展示した「モニュメント」シリーズ(1985年-)で宗教的なテーマに取り組みます。それを発展させた《シャス高校の祭壇》(1987年)は、1931年にウィーンの高校に在籍したユダヤ人の学生たちの顔写真を祭壇状に並べ、その写真を電球で照らすというものでした。肖像写真を集めて展示する手法は、大量の死者の存在、具体的にはナチス・ドイツによるユダヤ人の大虐殺とその犠牲者のイメージを想起させるものとして解釈され、大きな議論を呼びました。第二次世界大戦期のユダヤ人の大虐殺は、ユダヤ系の父を持つボルタンスキー自身の問題とも結びつきます。パリのグラン・パレの広大なスペースを生かし、大量の衣服を集積させた《ペルソンヌ》(2010年)など、その後もさまざまな手法によって、歴史や記憶、そして死や不在をテーマとした作品を発表します。
(中略)
国立国際美術館、国立新美術館、そして長崎県美術館の3館が共同で企画する本展は、ボルタンスキーの初期作品から最新作までを紹介する、国内初めての大規模な回顧展です。1970年代から近年までのボルタンスキーの様々な試みを振り返ると同時に、ボルタンスキー自身が「展覧会をひとつの作品として見せる」と語るように、作家自身が会場に合わせたインスタレーションを手掛けるという構想のもとに企画されました。半世紀を超える作家活動を経て、いまなお、積極的に創造を続けるボルタンスキーの広大なる芸術世界を紹介いたします。
by クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime展覧会 | NMAO:国立国際美術館
「クリスチャン・ボルタンスキー」作家略歴
1944年、パリ生まれ。写真や身分証明書といった記録資料と衣服や文房具といった日用品を組み合わせることで、自己あるいは他者の記憶に関連する作品を制作し、注目を集めるようになる。子どもの肖像写真と電球を祭壇のように組み合わせた「モニュメント」シリーズ(1985年-)や、大量の衣服を集積させた《ペルソンヌ》(2010年)など、現在まで一貫して、歴史や記憶、死や不在をテーマとした作品を発表している。
by クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime展覧会 | NMAO:国立国際美術館
回顧展スケジュール
国立国際美術館(大阪)
- 開催期間:2019年2月9日(土)~5月6日(月・休)
- 住所:大阪府大阪市北区中之島4-2-55
- 開館時間:10:00~17:00 ※金曜・土曜は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
- 休館日:月曜日(ただし、2月11日(月・祝)、4月29日(月・祝)、5月6日(月・休)は開館)
- 観覧料:一般900円(600円) 大学生500円(250円)
- ※( )内は20名以上の団体料金
- ※高校生以下・18歳未満無料(要証明)
- ※心身に障がいのある方とその付添者1名無料(要証明)
- ※本料金で、同時開催の「コレクション3」もご覧いただけます。
- 同時開催の「コレクション 3」も観覧可能。
- ■夜間割引料金(対象時間:金曜・土曜 17:00~20:00)
- 一般 700円、大学生 400円
国立新美術館(東京)
- 会期:2019年6月12日(水)~2019年9月2日(月)
- 住所:東京都港区六本木7-22-2
長崎県美術館(長崎)
- 会期:2019年10月18日(金)~2020年1月5日(日)
- 住所:長崎県長崎市出島町2-1
鑑賞レポート
「死」について考えざるを得ない
来場者は、このカーテンを潜り抜けなければいけません。7歳から65歳までのボルタンスキーの顔のイメージが投影されています。
新聞から切り取られて、拡大された100枚の写真。一体、どんなトピックで新聞に載っているのでしょうか。加害者?被害者?それとも・・・
コートと、囲む青い電球。礼拝堂を彷彿とさせる作品は、なんとも近寄りがたい雰囲気をか持ち出しています。
誰が撮影したのかがわからない複数枚の写真を組み合わせた作品。「死」の前は、走馬灯のように記憶が駆け巡ると言いますが、青春時代の楽しかった記憶を呼び起こさせるような作品です。
天井から吊るされたヴェールには、人の顔がプリントされています。ヒラヒラと揺れている様子が、霊魂を呼び起こしているように感じます。
展示会会期中、午前と午後に1つずつ電球が消えていく作品。人の命が、一つ、また一つと消えていくというメッセージを感じました。
本展示会で、もっとも印象的だった作品が「ぼた山」。日本全国から集められた礼服の山は、2mほどは積み上がっています。服には人の記憶が宿るとボルタンスキーは考えたそうですが、礼服に詰まった記憶とは・・・
「来世」という文字にひかれて奥へ進んでいくと、黒いモニュメントがたくさん。騒々しいビル群を思い起こさせますが、一方で、墓石のようにも見えてきます。
Twitterでの感想・反応
まとめ
「クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime」展は、人によっては、かなりの恐怖を感じるかもしれません。ほぼすべての作品が、なんらかの形で「死」を彷彿とさせるものだからです。というのも、ボルタンスキー自身、次のように語られているためです。
「死者」に捧げる儀式を行うことが芸術家としての私たちの仕事だと思っているのです。
個人的には、「この人の人生は、一体どんなものだったのだろう?」「どんな性格の人なんだろう?」と、考えを巡らせていました。まるで、Points of Youのカードで、セッションを受けているかのように。そして、自分自身の人生について、「死」をテーマに向き合うことができました。
思考を巡らせることが大好きな僕にとっては、非常に満足度の高い展示会でした。できればもう一度、国立国際美術館とは違う会場で鑑賞してみたいです。そしたらきっと、今回とは違う「死」への想いを抱くことができる気がするのです。
国立新美術館での鑑賞レポートもありますので、併せてチェックしていただけると嬉しいです。
鑑賞レポート「クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime」展(国立新美術館)