【感想】名古屋の演劇人が贈る名作劇場「煙が目にしみる」(名古屋市東文化小劇場)の観劇レポート【ネタバレあり】
名古屋市東文化小劇場で行われた、名古屋の演劇人が贈る名作劇場「煙が目にしみる」を観劇してきたので紹介します。
あらすじを読んで、「火葬場」が舞台の作品と知っていたので、絶対に涙を流すだろうなと予想していましたが、
夫婦の愛、家族との愛、恋人との愛、とにかくたくさんの愛を感じることができました。
死と直面したときの「愛」って、本当に美しいですね。
では早速、名古屋の演劇人が贈る名作劇場「煙が目にしみる」についてお伝えしていきます。
「煙が目にしみる」 概要
ビラ・チラシ
あらすじ
桜の花の咲く季節、とある地方都市にある火葬場の待合室。白装束姿の二人の男、野々村浩介と北見栄治がソファに座って煙草を吸っている。彼らはこれから荼毘にふされる身で、ぼんやりと窓から桜を眺め、これまでの人生に思いをはせていた。
一方、そんなことはつゆ知らず、それぞれの親族は骨上げの時間を待っている。お茶を飲み、弁当を食べ、テレビを見たりしながら時間をやり過ごしていた。しかしただ一人、浩介の母・桂おばあちゃんには、どういうわけか死んだ二人の姿や声がわかるらしい。彼らはおばあちゃんを通して、妻や愛する子ども達、想いを伝えたい人たちに何かを伝えようとして…
脚本・演出・出演者・スタッフ等
▼脚本・演出
- 原案:鈴置洋孝
- 脚本:堤 泰之
- 演出:神谷尚吾(劇団B級遊撃隊)
▼出演者
- 野々村浩介:栗木己義(劇団ジャブジャブサーキット)
- 野々村礼子:小嶋彩子(劇団エーアンドエーダッシュ)
- 野々村亮太:青木謙樹
- 野々村早紀:川本麻里那(劇団あおきりみかん)
- 野々村 桂:内藤美佐子(演劇人冒険舎)
- 原 田 泉:山口未知(劇団B級遊撃隊)
- 原 田 正和:小嶋隆之
- 北 見 栄治:小澤 寛(OfficeKAN)
- 乾 幸 恵:上田 愛
- 瀬野あずさ:元山未奈美(演劇組織KIMYO/名古屋プロダクション)
- 牧 慎一郎:二瓶翔輔
- 江沢 務:二宮信也(星の女子さん/スクイジーズ)
▼スタッフ等
- 衣裳:大池かおり
- 音響:椎名カンス((株)ガレッジ)
- 照明:坂下孝則
- 美術・舞台監督:近藤朋文
- 大道具製作:ステージクラフト三舞
- 演出助手:田中りえ、尾崎優人(優しい劇団)
公演スケジュール
- 2019/12/13(金) 18:30
- 2019/12/14(土) 13:30、16:30
- 2019/12/15(日) 13:30
劇場:名古屋市東文化小劇場
温かい涙が溢れてくる舞台でした
舞台は、火葬場でした。
これから火葬される二人の男性を取り巻く人間関係が、物語の中心です。
一人の男性は、妻に先立たれ、その後にできた恋人と一緒にいるときに死亡。そして、恋人がいることに対して、男性の娘は、父親を取られたような嫉妬心を抱いていた。
もう一人の男性は、母よりも先に、自分の妻や子どもたちよりも先に、突然の死を迎えてしまった。
それぞれ同じタイミングで火葬されることもあって、2つの家族が絡み合いながら、死者への想いを吐き出していくストーリーです。
見どころは、二人の男性の喪主である、娘と妻が抱えている、死者への想いです。
娘の方は、父に愛人がいたことから、目を背けようとしていました。しかし、なぜか死者と交流できるおばあちゃんによって、娘と愛人が火葬場で鉢合わせてしまうことになります。
ここで愛人から、父との関係や、父が抱いていた亡くなった母(父から見たら妻)への想いを知ることになります。
こうして、父の想いを知ることで、娘は愛人のことを許すようになりました。それよりも、愛人に対して、感謝の気持ちさえ抱くように。
亡くなった男性の娘に対する愛、先に亡くなった妻への愛、愛人に対する愛。
それぞれが、本気の愛だと知ったとき、僕の目には、自然と涙が溢れてきました。
そしてまた、妻は、普段家にいなかった夫の代わりに、家事や子育てを一生懸命に行なっていました。
そのことに対して、妻は不満を感じていたわけではありませんが、
妻は、夫のことを、深く愛していたのです。
それ故に、先立たれてしまったことが、悲しくて悲しくて堪らなかったのです。
しかし、子どもたちの前では、辛い気持ちを隠していました。
けどしかし、またなぜか死者と交流ができるおばあちゃんによって、夫への想いを届けたとき、夫からの想いを受け取ったとき、
何十年と積み重ねてきた本当の愛情を感じたのです。
家族みんなで、「お父さんのバカヤロー!」と叫んでいるときは、「みんなお父さんのこと大好きなのに、なんで先に死んでしまったの」と言っているように感じて、僕は、号泣してしまいました。
ついつい自分のことと重ねて考えてしまって、もし自分の父が、今このタイミングで亡くなってしまったら・・・と、考えてしまったんですよね。
ただ、こうして二人の男性と、取り巻く人間関係が、円満になっていく様子に、胸をほっこりとすることになりました。
涙を流すことになった舞台でしたが、観劇後の気持ちは、とっても清々しいものとなりました。
本当に、大満足な舞台でした。